sakamttyの日記

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進化する天文学の技術:木曽シュミットシンポジウム2013に参加して

木曽シュミットシンポジウム2013に参加して、

個人的に感じたことをまとめてみました。

えっ、知らなかったの?と言われてしまうことも

書いてあるかもしれませんが、ご了承ください。

 

1、観測機器のすぐ横に高速解析pcがある時代へ

 近年、天体の中にはすぐに見えなくなってしまうもの(超新星etc)が

あり、そういったものを発見後すぐに追観測したいという要求が高まってます。

 しかし、従来は、観測所で観測、その後研究室に持ち帰って解析という

パターンでしたので、どんなに速くても数日のタイムラグが発生します。

従って、そういった要求を満たすのは、なかなか困難でした。

それを聞くと、一部の人は、「簡単に解決できそうですね。

最近ネットワークが速くなってきたいるので、観測データを観測後

すぐ外部の研究室に送ればいいのでは?」

と思うかもしれません。

それはそうなんですが、多くの観測所は山の上など辺鄙なところにあるので、

ネットワークはそれほど高速ではありません。

また、画像データは圧縮しても相当重いです。

従って、外部へデータを転送するというのはそれほど良い手法ではないです。

じゃあ、どうするか、

その1つの解として出てきているのは、高速な解析pcを観測機器のすぐそばに

置いて(ネットワークの内部に解析pcを置く)観測後すぐに自動解析するという発想。

まだ主流となっているわけではなさそうですが、

データ量は今後ますます増えると考えられるので、

観測機器というと、

望遠鏡、CCDカメラ(分光器、フィルターetc)に加え、

解析pcまで含まれる時代に入りつつあるのかもしれません。

 

2、脇役(気象機器、ガイド望遠鏡)が重要な時代へ

 観測は、1台の望遠鏡とそれにつけられた光学機器(CCDカメラ、分光器)を

使って行われます。

 しかし、地上で観測するとどうしても、星や銀河からやってくる光は

地球大気によっていろいろ複雑に吸収され、観測データの質は悪くなります。

こうなると(測光)精度が上がりません。特に空の状態の悪い日本では。

 これまでは、こういった精度の劣化はあきらめられてきました。

しかし、近年、観測所内に気象機器が充実してきており、

空の状態をある程度把握できるようになってきました。

もちろん、これらは今後遠隔地からリモート観測をする時に

現地の天候を把握する上で大変重要な機器となります。

ご利益はそれだけでなさそうです。

それをうまく解析し、天気の時間変動がわかれば、

それを望遠鏡を使って取得した画像データにフィードバックをかければ

測光精度が上がる可能性があります。

 

3、観測のオーバーヘッド、限りなくゼロの時代へ

 天文学で使う冷却CCDカメラはゆっくりと(15−60秒かけて)読み出し、

読み出しの際発生するノイズを抑えるのが基本です。

これまでの観測は、この読み出し時間が長いことが問題となっておりました。

近年、たくさんの読み出し口をつけてできるだけCCDカメラを

速く読み出す工夫がなされてきてます。

今後ますます読み出し口は多くなると思います。

一方、シュミットシンポではCMOSの話がありました。

CMOSの最大の特徴は、冷却CCDカメラに比べて格段に高速読み出しが可能なこと

です。

CCDがめちゃくちゃ多いチャンネルで読み出すのが先に実現するのか

天文学に使用可能なCMOSが先に登場するのか

わかりませんが、いずれにせよ、

観測のオーバーヘッドがゼロの時代に入りつつあるようです。